漢方をわかりやすくご紹介します
妊娠力について
本来備わっているはずの「妊娠する力」。
なかなか授からないのは、本来持っているカラダの機能や能力を発揮するためのバランスが崩れているのかもしれません。
東洋医学の教科書ともいえる文献「皇帝内径」には、"女性は7の倍数"、"男性は8の倍数"の年齢時に節目を迎え、カラダに変化が訪れるという記述があります。
漢方では、自然に逆らわず、体の変化に柔軟に対応しながら、
無理なくバランスを整えるように働きかけることが期待できます。
妊娠を支える六臓六腑
六臓六腑の働きが1つでも停滞すると「妊娠しづらいカラダ」に...
東洋医学では、病気は「六臓六腑」の変調によって起こるとされています。六臓六腑の働きは、代謝・自律神経・ホルモンの3つの働きにより支えられています。
この3つの働きが良好で、かつバランスがとれた状態により、十分に内臓が機能し、カラダが持つ本来の妊娠力を発揮することができるのです。
どれか1つでも働きが停滞し、バランスが崩れると内臓機能が低下します。
すなわち妊娠に特に必要な「肝・腎・脾」の働きも十分に発揮できなくなり、子宮環境・卵子や精子・ホルモンバランスに不調をきたして、妊娠しづらくなってしまうのです。
妊娠に特に必要な「肝」「腎」「脾」の役割とは
-
「肝」は、"血"を蔵す
肝は血液を貯蔵するとともに、思惟活動の中心として自律神経系とのかかわりが深いとされます。
例えば、ストレスがかかって生理周期が乱れるなどは、「肝」のバランスの崩れといえます。 -
「腎」は、"精"を貯蔵する
生命活動を維持する栄養物質と、生殖活動に必要なエネルギーを備蓄し、成長発育、妊娠、出産、老化を管理しています。
生命の根源となる卵子や精子に元気がないのは、何よりもそのかた"本体"の「腎精」の不足や衰退を現わしているといえます。 -
「脾」は、"血"を調整する
栄養物質や体液の運搬を担い、内臓や身体の機能維持にかかわっています。
不正出血や月経過多などの出血症状や流産傾向などは「脾」の異常によると考えられます。
六臓六腑の働きを良くすることで「妊娠しやすいカラダ」へ
"妊娠できるカラダ"とは、妊娠の成立のために良好な子宮環境、ホルモン活動のエネルギー源となる腎精の充実、卵胞の成熟を支える十分な血液や栄養、そして流産しないように支えるエネルギーなどがバランスよく機能する状態であるといえます。
個々の内臓機能を高め、みちすじを整える
六蔵六腑のはたらきを良くするには、身体を流れる「十二経脈」という12種類の「気」の流れをスムーズにしておく必要があります。具体的には血をきれいにし、巡りを整えることで、子宮と子宮付属器の血流が良くなり、子宮内膜の充実へつながります。同時に栄養状態も良くなり、着床しやすくなります。
腎精(生殖力)の充実は、卵巣機能も高まり妊娠を継続するためのホルモン分泌にもつながります。
不妊についてはこちら
漢方でめざす体質改善
-
卵子の質を良くしたい
東洋医学の考えでは、"質のよい卵子"が育つためには、『腎』と『肝』の働きが重要となります。
腎=生殖活動のもと(=腎精)を支配しています。
腎の働きが充実すると、卵巣機能も高まり「ホルモン力」が安定します。
肝=血の巡りや自律神経を支配しています。
肝の働きを養うことにより、「血液力」を整えます。
女性は一生分の卵子を持って生まれ月経周期により減少していきます。卵子の数=妊娠にはリミットがあるのです。
年齢とともに卵子の残数が減少すると、一般的には良質な卵子が排卵される割合も低くなります。
子宝漢方によるアプローチは「卵子の数が少ない=卵子の老化」ととらえるよりも、「腎」を補うことで卵巣の働きを整え、「肝」を養うことで、血液を巡らせ、卵子の成熟を助けることにより、1回ごとに排卵される卵子の質を向上することをめざします。 -
精子の数を増やし運動率を向上したい
「腎」の働きは男性も同様で、生命エネルギー(腎精)が貯蔵されており、生殖機能に反映されます。
腎の働きが弱まると、性欲が低下し、精子量の減少、精子の運動率の低下などにつながります。
ストレスが多い、疲れやすい、トイレが近い、やる気が出ない、などは腎精不足に思い当たる場合は補腎薬をおすすめします。 -
着床しやすい子宮環境に整えたい
着床の場となる子宮内膜の質を良くするには、原材料である「血」の状態を整えることが大切になります。
血液量が足りないと子宮内膜の厚さの不足に、巡りが滞ると劣化の要因となりかねません。
漢方では、「血」の貯蔵庫である「肝」を養うことにより子宮環境の充実をはかり、また、自律神経やホルモンバランスが整うことで基礎体温の安定にもつながると考えられています。
女性にとって「血」は、月経・妊娠・出産・授乳に関わる欠かせない要素であり、特に骨盤腔内の血行不良は「瘀血」といわれ、卵巣や子宮の機能低下や病気の要因となることから、不調を感じたら放置せず、改善をめざしましょう。